どのようなお仕事にMODOを利用していらっしゃいますか?
自社商品のパッケージ、カタログ、WEB用の画像を作っています。あとは商品が実際使われている様子をお客様に説明するために室内空間まで含めて全部作るときもあります。我々はBtoBビジネスも行っていますので、お客様にイメージしていただきやすい画像を作るのも我々の仕事です。
私達JVCケンウッドには「JVC」と「ケンウッド」というブランドがあります。ホームページに掲載されている全ての製品が対象なので、製品に必要な高精細なビジュアルイメージ、加えて、デザインプレゼンテーション用に簡単なアニメーションなどもMODOで作ります。
MODOの他に良く利用されているツールはございますか?
CADについてはSolidworksを使っており、他にはPhotoshop, Maxwell Renderを使っています。
MODOを導入されたきっかけをお教えください。
我々は2008年ぐらいから、パッケージデザインにCGを使えないかというような検討をはじめ、商品のパッケージの写真をCGに置き換えるという作業を行っていました。
ちょうど社内でもパッケージデザインするときに現物が無いということが出てくるだろうと言われていたのがこの時期で、積極的に取り組んでいました。
それ以前は、「デザインをして、モデリングして、設計して、商品が完成。その後、実際の商品写真を撮影して、パッケージ化する」といったワークフローだったのですが、製品のデザインや設計の作業を3Dで行うようになると、どんどん並行して作業するようになっていったんです。
それは製品の発売までのスパンを短くするという目的だったのでしょうか?
そうですね。製造業では開発リードタイムの短縮と言っており、設計が終わって金型が上がってきたときにはもう製品画像を作っています。
我々は社内のデザイン部門でCADを使い外観のデータを作っていたので、ほぼ最終に近い外観データがデザイン部門にあります。最終的には金型のデータを使ったりもしますが、デザイン部門で作ったデータで作業のあたりをつけることができたので、環境的にはやりやすかったですね。
CADのデータの読み込みはどういった感じのワークフローだったのでしょうか?
一番最初はShadeを使ってレンダリングしていました。Shadeを使っていたのは、その当時XVLという3Dのビューワがあって、それを使ってWEB上でバーチャルシミュレーションのデザインを行っていたためです。XVLではCADのデータを読み込むことができ、さらにShadeがそのXVLのデータを読み込めたんです。それまではCADのデータをCGソフトに読み込むことができなかったのですが、そこから積極的にCADデータをCGの方に使うようになりました。
Shadeはしばらく使っていたんですが、その後Maxwell Renderを使うようになりました。Maxwell Renderはレンダリングに時間はかかるのですが、非常にきれいなフォトクオリティで仕上げることができます。これによって社内でCGを使うという流れが定着し、カラーバリエーションの検討やパッケージイメージの制作にしばらく使用していたんですが、スピードの面などについていろいろ要望があり、また新たなソフトを探すようになったんです。
ポイントとしては「CADデータが使える」「グローバルイルミネーションが使える」「演算が速い」そして「安い」というのがあったんですが、ちょうどそこにMODOがヒットしました。
当時から我々が使っているSolidWorksというCADソフトがあるんですが、SolidWorksのデータがmodoにそのまま取り込めるといった点も大きかったです。他のソフトだとそこってお金がかかるところなんですよね。いろいろ試しながら使っていたですが、modo 301, 401まではまだちょっと思っているような品質が出せませんでした。でもmodo 501ぐらいになって、テクスチャーの出方がちょっと変わったんですよ。それで「なんかイイんじゃないの」と。「良くなったんじゃないのこれ」という感じでMODOを真剣に使い始めたんですよね。そこからしばらくはMODOとMaxwell Renderを並行して使うようになって、modo 601になって半々、MODO 701では7対3くらいの割合でMODOを使っていました。今ではよほど特殊なケースでなければレンダリングにMODOを使っています。MODOの性能が良くなるにつれ、比重が大きくなっていった感じですね。
ではMODOを使うようになって良かった点をお教えいただけますでしょうか?
作業時間が事前に見積もれるので、段取りがつけやすいんですよね。例えば、大体これぐらいのサイズでこれぐらいのクオリティであれば、2時間かければここまでできる、というのが事前に見えてきます。スケジューリングが非常にしやすいですね。我々はいろいろな製品を並行してレンダリングすることが多いので、その時間がよめないとなかなか仕事がやりづらいんです。比較する訳じゃないですけども、Maxwell Renderの場合はどれくらいかかるかよみにくい。MODOの場合は何回かテストをしていくと、大体これぐらいのクオリティであればこれぐらいの時間でできる、というのが見えてきやすかったんですね。なので仕事をすすめていく上では、非常にやりやすかったです。
一つの案件でどれぐらいの期間、作業をされるんですか?
一つの案件だと一週間、長いと二週間くらいかけます。カラーバリエーションがあったりしますので。
カラーバリエーションにかける時間は結構必要になるんでしょうか?
そうですね。なぜかと言うと、思ったような色にならないんですよね。ライティングから変えないとダメなときもありますし、さらにメタリックだとライトだけじゃきれいに出ないのでいろいろ工夫します。例えば紫のメタリックを表現し、次は赤のメタリックというときには単純なマテリアルの置き換えだけではうまくいかない、というのが実情なんですよね。白や黒っていうのは、ノウハウの蓄積があるのでなんとなく分かるんですよ。ただそうじゃない有彩色のものになってくると「黄色ってやったこと無いからどうやっていいんだろう」って思ったりするんですよ。
「色が違うココの部分だけ差し替えればいいじゃない」って言われるんですけども、実はいろいろなところへ微妙に影響しているので、そういうワケにもいかない。やってる人じゃないとなかなか理解してもらえないですね。白と黒の場合でもライティングそのものが違いますし。
あとMODOを使っていて良かった点というと、ビデオカメラがいい例なんですが、ビデオカメラって黒一色っていうのが多いんですが、黒の中でいろいろな材質の違いというのを表現しなければいけないんです。結構むずかしいんですよ、それって。でもMODOだと、基本のマテリアルやバンプマップなどの設定でいろいろ調整できます。同じ黒でも、微妙にちがうニュアンスを持たすことができるんですよね。それがやっぱりリアリティにつながります。
レンダリングした画像に対して画像処理はされていますか?
してはいますが、ビデオカメラのときは本当に少しだけでしたね。リフレクション、スペキュラー、アンビエントオクルージョンを出力してPhotoshop形式でデータを保存し、調整しているだけです。直接何かを描いたりということはしていないですね。基本的に私が担当する製品では、後で何か描き込んだりはしないです。映り込みの合成や、背景は描き込んだりしますけども、ほとんどそのままですね。描き込んでしまうとそこで嘘っぽくなってしまうので。製品によっては「もっと描き込んでください」という依頼もあります。私はそこは担当していないのですが。
CADユーザの方って、必ずしもPhotoshopが達者というわけではないと思うんですよね。でも、MODOだけでこの辺までできる、時間と習熟度があればCADデータを取り込んでこの辺までの品質をアウトプットすることができる、というのが一番のメリットと思うんですよね。結果を求めるために、多くのソフトを覚えなきゃいけないというのがないんです。
ビデオカメラのレンズに虹色の干渉光のある画像がありますが、これは合成されたんでしょうか?
MODOのグラフエディターで反射の色を調整しています。カメラはレンズが命なので、広告写真では一番レタッチをしているところらしいです。先ほど、一部まだMaxwell Renderを使っていると言っていたのは、この部分なんですよね。この製品はMODOで描いてますが、一応保険としてMaxwell Renderでも描きました。光が回っていく感じであるとか、コーティングされたガラスの感じというのはMaxwell Renderが強いので。それで、そのときに驚いたんですがMaxwell Renderのプラグインを使うとMODOのカメラをそのまま書き出せて、Maxwell Renderの中で同じ画角で描けるんですよね。違うソフトでレンダリングをするときには、カメラの設定を合わせるのは大変なんですよ。それがスムーズにいけるので、特定の部分だけレンダリングさせて合成するというのができる。それも今まではできなかったことなので、助かってますね。
あとからモデルの形に修正が入ることはありますか?
それはもちろんありますが、部品を置き換えるようなイメージなので全然苦にならないですね。あとよっぽどのことが無い限り、UVマッピングはしてないですね。この手のモデルは、UVマップしなくてもある程度のところまでいけてしまうんです。なので新たな部品を読み込んでマテリアルを設定してレンダリングしても、そのまま置き換えがきくんですよ。すごいんです。これできないですよ、他のソフトじゃ。
ヘッドホンの木目の材質はどうやって設定しているのでしょうか?
これはThe Foundryのフォーラムでフランス人の方が似たようなマテリアルを公開していらっしゃったのを見つけて、試しにやってみたんです。そしたらいい感じになったんで、参考にさせていただきました。実際の製品の木目部分のパーツは、積層された木の板をろくろのように削っているので、普通のマッピングじゃ駄目なんですよ。UVでも結構難しいところがあってどうしようかなぁ、と思っていたところに、そういういい情報をたまたま発見することができました。
それは意外でした。フォーラムを活用されているのですね。
はい。基本的に僕は一日一回はフォーラムを見るようにしています。何かないかなと。すると必ず答えがあるんですよね。あのフォーラムは本当にいいですよ。英語なんてGoogleで翻訳すれば、ある程度のことは分かるので、みんな見てほしいですね。
素材を購入したりはされているんですか?
9bスタジオのMODOキットは買ってます。2~3種類ありますよね、プロダクト用のキット。それを編集して自分の所にストックしています。あれでいろいろ設定の方法を勉強することもできますし。
では、MODOへの要望などございましたらお聞かせください。
MODOって一本で何でもできちゃうのがやっぱり魅力なんですね。他のソフトではいろんなプラグインを入れないと自分の思っていることができなかったりすると聞いたりします。MODOはそれだけで大概のことができる。ただ、サードパーティに頼らなくても大概のことができるんだけれども、The Foundryと合併してからは、わりとサードパーティ製のプログラムをいれないといけなくなって、コストがかかってきたように思います。そうなると、お金もっているユーザじゃないと思っている表現ができなくなるじゃないかなと。それってMODOが元々持っている良さを消しち ゃっているんじゃないかなって気がしているので、できればサードパーティに頼らないでMODO一本で全部まかない続けてもらえると、ユーザとしてはありがたいですね。
最後にこれからMODOをはじめられる方へのアドバイスをお願いします。
MODO JAPAN さんのサイトもそうですが、ユーザーのみなさんがいろんなノウハウを公開しているサイトがたくさんあるんですね。それを見ていくと大概の問題が解決できる。MODOを導入するときに、「書籍があまり無い」「どうやって覚えていくのか分からない」「スクールも無い」、そういった理由で敬遠されているかたもいらっしゃると思います。でも実はユーザーの皆さんがそういう情報を公開していて、スクールだとか教本だとか、そんなの必要無いぐらいWEBに情報が充実してるんですね。ですので、躊躇無く使っていただいて、分からない所は検索すれば、答えがいっぱい載っています。そういうのを積み重ねていけば必ずいい物ができると思っています。それぐらいユーザーの幅が広いんですよね、このソフトは。限られたスペシャリストが使っているツールではないので、本当に初歩的なことからテクニカルなことまで、ありとあらゆる情報が載っているんですよ。だから心配しないでまず使ってみてください。
それと、ユーザーギャラリーがあるじゃないですか。そこにはきれいな作品がいっぱい出てるんですよ。そういうのを見ると、使いこなせるようになればそこまでいける、こういうのを描けるんだ、というのがわかるんですよ。それが励みになると思うので、どんどんトライ&エラーを繰り返して習熟度を上げて、みんなでレベルアップしていければなと思います。